Day 4 of 10.

Day4 「Best Of: Give Up the Funk」/Parliament

This Is Da “P-FUNK”.

ついに来年で現役引退を表明した大御所、ジョージ・クリントン。1960年代後半から現役で時代を牽引し続けた彼の最高傑作「Flashlight」や「Give up the funk」をピックアップしたベストアルバムをチョイス。

Parliament(Funkadelic)が生み出すサウンドはP-Funkと呼ばれ、そして同時に、P-FunkとはParliamentのこと。(ちなみに、ほぼほぼ同じメンバーで構成される2つのバンド「Parliament」と「Funkadelic」については、よりロックで洗練された印象なのが「Funkadelic」。よりサイケで泥臭いのが「Parliament」。僕は俄然、ジョージ・クリントンといえばParliamentだと思っている。)

その特徴のひとつは、サイケデリックで腹の底のところをぐりぐりとねじ込まれるようなサウンド…つまり深いワウと歪みのかかったシンセベースや、宇宙みたいなシンセサイザー。そしてもうひとつは、その音を具現化した、ライブ会場に宇宙がおりてきたみたいな突出したパフォーマンスです。

(いまのところ)意味がわからないのも無理はないでしょう、Brian Josephsは彼をこう評しています。

ジョージ・クリントン(George Clinton)とは宗教である。

神をその頭で理解しようとするならば、それこそ冒涜です。この宗教はしかしありがたいことに、偶像崇拝を許容している。神の姿を、私たちは今も克明に画面のなかに見ることができます。

 

 

ライブ会場に現れるジョージ・クリントン、背後には宇宙船(?)…。

帝王James Brownのビートを支え、そののちP-Funkのグルーブを作り出したファンクベーシストの憧れ、ブーツィー・コリンズは当初、メンバーの薬物使用の激しさについていけなかったそうです。こんな演出、確かにキマってないとなかなかできるもんじゃない。(P-Funkのクレイジーな見た目はBootsyの影響が大きい、なんて話もあるらしいけれど。)

 

 

大御所・Bootsy Collinsの見た目、2011年に至っても見てのとおりです。相変わらず、アイコンである星型サングラスと星型ベースをぶんまわしながら強烈なアクトを聞かせてくれます。

流れるソウル

総帥ジョージ・クリントンがParliamentを結成したのは、なんと1955年、当時彼が14歳の頃だったといいます。僕がはじめてParliamentに出会ったのは確かに中3のころだったけれど、そのときはその概念の大きさに、まったくもって圧倒されるばかりだった…、というのに。

しかし大学生になり、ブラックミュージックに再度触れた僕はやっぱり、Parliamentに惹かれざるをえなかったのです。ストレートなWhite Funkではカモせない圧倒的なGroove、あるいは類まれなるパフォーマンス、宇宙への”トリップ”じみた体験、その全てが神がかっていた、僕もこんなふうに、見る人に鮮烈なエクスペリエンスを与えながら、本能的に体が動き出す一体感をクリエイトする、そんなアーティストになりたいと願った。それが僕にとってのParliamentという存在です。

 

 

当時のParliamentが与えた影響も、もちろん計り知れないものでした。それはいまミュージックシーンの先端を走る人々にインタビューすればすぐに分かることであろうし、いまのHip-Hopの楽曲を聞けば、彼らの楽曲がどれだけサンプリングされているかなんて、すぐにわかること。ジョージ・クリントンのソウルはFlying LotusやRed Hot Chili Peppersらのなかにうねりつづけています。(ちなみに日本では、米米クラブとかね。)

そして何がすごいって、彼はまだ”現役”であること。

最新のアルバムはFunkadelic名義で2014年に発表された「First Ya Gotta Shake the Gate」。なんと今作で、33作目のアルバムになるんだそう。更にParliament名義では、来年40年ぶりのアルバム「Medicaid Fraud Dog」のリリースを計画しているのだとか。

来年に引退することを発表したものの、そのバイタリティに度肝を抜かれます。一体何歳なんだ。

 

既に俺のホログラムを、バンドのメンバーたち全員と製作済みなんだ

将来、彼らのライブでジョージ・クリントンが登場することがあるのでしょうか?楽しみになっちゃうよ。

ジョージ・クリントンとともにあるもの

ジョージ・クリントンは影響を受けたミュージシャンとしてJimi Hendrixを挙げています。特に「Are You Experienced」のアルバムは聴き込んだと。ジミヘンのサイケさは、間違いなくFunkadelicの初期の作品に影響を与えています。

 

 

ところで、忘れてはいけないのが「ファンクの帝王」James Brown(1933-2006)でしょう。まさにゴッド・ファーザーであり、”Funk”という概念の生みの親が彼、James Brown。

ベースのブーツィーや、トロンボーンの名奏者フレッド・ウェズリー、サックスのメイシオ・パーカーなどは、もともとJames Brownのバンドで演奏していたことからJB’sと呼ばれ、彼らもこののち、それぞれの楽器演奏者に多大な影響を与えています。もちろん、ジョージ・クリントンとも、ともに数多くの名演を残しました。

 

 

ぜひ、ここではSly & The Family Stone(スライ・ストーン)も紹介しておきたいところ。ジョージ・クリントンらと同時期に活動したアーティストで、ジェームス・ブラウンやジョージ・クリントンにならび、”Funk”を作りあげてきたアーティストです。

人種や性別混合のファンクバンドとして、”Everyday People” など、人種差別などの偏見への抵抗や、愛と平和、人種統合の理想を掲げ続けた彼らの音楽もまた、数多くのアーティストに影響を与えました。

Stand!やEveryday Peopleを聞けば、その音楽から溢れ出る”愛”が、今の時代においてもまだ、私たちの心を深くつかんで離さない、それほどまでに彼らの音楽が普遍的であることに気づきます。Parliamentとはその音楽の方向性は全く異なりますが、僕が本当に好きなアーティストの一人です。

 

 

ところで、いつの時代もベース少年たちの憧れってのは”スラップ”ってやつ(ベースをベンベン鳴らすやつ)なんですが、そのスラップの雄といえば、Bootsy Collinsに並び、このSly & The Family Stoneに在籍していた “Larry Graham” ですね。気になる方は、ぜひ”Pow”を聞いて見てくださいませ。

 

 

最後に、ジョージ・クリントンの言葉を贈ります。

ファンクはどんなときでも生き続けていく。それは自分の力を尽くすってことで、全力を尽くしたなら、あとはただファンクに任せればいい。大抵、自分の行くべき先に連れて行ってくれる。