勝手に特別対談vol.2 森一貴×新山直広「創造産地を創造する。」(後編)

創造産地を創造する。

前編はコチラ

哲学や価値観やクリエイティビティのあるまちに。

新山 今、僕が会社のビジョンとして掲げているのが、
「創造産地」という言葉。
TSUGIがずっと仕事をし続けるために、もちろん産地とともにがんばっていきたいと思う。

だけどそれ以上に、おこがましい言い方かもしれないけど、
僕らTSUGI自身がより楽しく、よりよいしごとをするために、
クライアント自身も哲学や価値観を持っていてほしい、
そういうクリエイティブなひとたちと仕事がしたいと思ってる。

なんとなくわかります。
TSUGIもそうですけど、組織とか、イベントとかがきちんと続いていくためには
「やる側が楽しい」状態を整えることが大事だと思っていて。
その大事な要素が、関わる仲間や相手が、自分自身の考えや価値観みたいなものを持っているってこと。

こういうのって、移住を決断する上でも
引っかかってくるポイントなんじゃないかなあと思ってます。

つまり、移住先に、おもろいやつはいるのか?
俺が何か言ったら、それめちゃいいね!と言ってくれるやつはいるのか?
俺に対して、自分の考えをきちんと表現してくれる仲間はいるのか?ということ。

新山 ほんとやね。
例えばやけど、TSUGIでいうと、最近ずっと一緒に仕事をしている「ろくろ舎」って会社があって。

その代表のよしおさんは、職人として必要な正確さや、速さといった要素は、ほかの河和田の職人と比べると全然足りない。でも、その代わりによしおさんにはクリエイティビティがあるし、きちんとした考えを持ってる。そういうクライアントと仕事をする時って、いい仕事ができるし、何より自分たちが楽しいんだよね。

うんうん、そうですね。
俺もよしおさんと仕事してて、楽しいですもん。
ろくろ舎
ろくろ舎
そういえば、その視点でいうと、
TSUGIにいて、すごくはっとさせられたことがあります。
新山 なになに?

僕はこれまで、さっきも言ったように、
「このまちにおもろいやつはいるのか?」って視点でまちを見てしまっていたんです。

でも、TSUGIにいて気付いたのは、TSUGIはその見方をしてないんだ、ってこと。
つまり、TSUGIは「おもろいやつがいないなら、自分たちで増やしていこう」としている。
RENEWのようなイベントを通じて、地域の人に新しい気づきを与えることで、
地域の人自身が自分で考えて、工夫する状態を生み出そうとしてるんだなって。

そんな考え方もアリなのかっていうのは、すごく衝撃でした。

新山 そんなに立派なものじゃないけどね。笑
誰もRENEWしてくれなんて一言も言ってないけど、
やっぱり僕らはデザイナーという立場上だから、作り手がいないと成り立たない。
だから、デザインする前の段階で、河和田のものづくりが持続するためにどうすべきかっていうところを考えなきゃいけないと思ってて。その一つのケースがRENEWだと思ってる。

まだまだ途中やけどね。
僕はやっぱり、もっともっと先を見たい。
Hacoa漆琳堂みたいな尖った会社が、もっとたくさんある状態を見てみたい。

今の河和田って、自転車で動ける範囲に多様なものづくりが残っている。
それって結構、魅力的なんだよね。
それを磨いていって、エッヂがたった会社がたくさん出てくると、河和田全体が一つの面になる。

そしたら、河和田っておもろいやん、という人たちが増えて、会社の収益やブランド力が向上して、またさらに河和田っておもろいやん、っていう内向きの求心力ができてくる。
そうなれば、お金やひと、チャンスがどんどん集まってくるようになる。
そういう循環を見てみたいって思うかな。

さらっと言ってますけど、めちゃめちゃ難題ですね。笑

新山 うん、超難題にチャレンジしてると思うで。笑
でも、実はなんとなく希望もあるなーと思ってんねんな。それは何かっていうと、PARKのハマさんが言っている「ブラジルモデル」。

ブラジルでは、日系人が人口の1%いる。
それしかいないんだけど、ブラジルの経済において、文化において、その日系人がブラジルに与える影響ってめっちゃ大きいらしいんだ。それの河和田版みたいのってできないかなって思ってて。

いま、河和田の4400人の人口のうち、移住者は25人。
それが44人にまで増えたら。
わからんで、何かはわからんねんけど。
もしかしたら、何かが変わっていくんじゃないか、って思ってる。

Hacoaのキーボード。(Hacoa公式ウェブサイトより)

ほしいのは、「にやにやするような多様性」。

新山 変化って意味では、
気づきを与えるとか、クリエイティビティがどうとか言ってるけど、
やっぱり究極は教育なんじゃないかなって思ってる。

だから、本当は若いうちから、
子どもたちとかに対して何か手を打っていくべきなんじゃないかと思ってんねん。

そこなんです。
新山さんが最終的に教育についたところがめっちゃおもしろくって。
新山 っていうのは?
俺がはじめてTSUGIのこの場所に来て、話をしたときのこと覚えてますか?
俺はその時、教育とまちづくり、どっちをやるかで割ともやもやしていて。
人から見ると、教育とまちづくりって全然違うやんって言われるんだけど、
俺の中では一緒なんだ、って話をしました。

というのも、俺自身は、そもそも理想として人を幸せにしたいというのがあります。
その文脈でいうと、「教育」は、その人自身が幸せを考え、定義し、獲得するのを後押ししてあげる場。
「まちづくり」は、その人が幸せになれる場を作ってあげること。
人が幸せになるって意味では、どっちも一緒なんだ、と話しました。
でも、聞いてもらってわかるように、
俺は、教育とまちづくりでは、アプローチのしかたは全然違うなと思ってたんです。

一方、新山さんの話を聞いてみると、新山さんは、まちづくりの中に俺の思う「教育」を見ている。
つまり、新山さんに言わせれば、まちづくりっていうのは、
単純に遊び場とか、行けばおもしろい場所を作って提供してあげることだけじゃない。
まちの人自身が、考えて、実行する力を身につけるように後押ししてあげることもまちづくりでしょ、と。

新山 そうやね。
逆に気になるんやけど、森くんの言う幸せになれる場ってどういうもの?説明できる?

なんだろう。
「ゆるい移住」の本質的な部分って、きっとその答えになるんだろうと思うんですけど…

幸せになれる場って、「なんとなく、楽しい」みたいな場だと思うんです。
そして、それってたぶん、機能や境界、計画とかが曖昧な状態なんだろうな、と思います。

こないだ、長谷川浩己さんと山崎亮さんの「つくること、つくらないこと」を読んだんです。
これがめちゃめちゃおもしろかったんですけど、その中で気になったのが、状況の「グラデーション」っていう言葉。

なんで気になったかというと、それが俺の中の「曖昧」のイメージと一緒だったからです。
ある機能、例えば道路に「車が走るところ」って機能がある。
そこにグラデーションをかけてあげることをイメージしてみてください。

つまり、道路は「車が走る」場所なのは間違いないんだけど、
別に道路でキャッチボールをしてもいいし、日向ぼっこをしてもいい。
そういうグラデーションをつけて、場を曖昧にしてあげること。
それが幸せを作っていくのかなと。

一番ぼくのイメージに近いのが、田舎のおまつりみたいな形だと思ってます。
田舎のおまつりって、おまつりっていう名前がついてますけど、そこでカラオケもやるし、露天も出すし、飯食っても酒飲んでもいいし、何もしなくてもいい。
いつ何が起こるとか、誰がくるとか、めちゃめちゃわかんないじゃないですか。

たぶん、そういう状況が理想なんです。
なんでもないんだけど、なんとなく楽しい。
誰が別に何をやっていようと、あ、楽しそうでいいね、と言ってあげられるような状況。
にやにやできるような感じ。

新栄テラスにて。きっとにやにやって、こんなの。
新栄テラスにて。きっとにやにやってこんなの。
新山 そういえば、前、森くんは「にやにやできるまちを作りたい」みたいなことを言ってたね。

はい。
仏生山おんせんの、岡昌平さんがおっしゃってた言葉です。

実はにやにやって、すごく本質的なんじゃないかって気がしてて。
というのも、にやにやって、計画的なものからは生まれてこないと思うんです。
なにか、そこにあるいくつかの要素が、偶然に重なって生まれてくるっていうか。

将来的には、そんな、隙間というか、無計画をデザインするようなことがしていけたらなあ、と思ってます。

新山 うんうん。それはおもろいね。

話聞いてて思ったのは、それって、多様性の許容ってのが結構大事なんちゃうかなーってこと。
ゆるい移住みたいなライフスタイルとか、
ものづくりも、どんどん自由に新しいものを生み出していっていいんだよっていう許容。
そういう多様性を許容することで、
文化っていうものが生まれてくるんじゃないかなって思う。

文化が生まれるまち、
それが鯖江だったらいいよね、鯖江ならきっとそうなれる可能性があるよね、
と、僕は思ってる。

さて、もうそろそろ団地つくで。

思ったより早かったですね!
最後に、どうですか、TSUGIの感じは。
新山 んー、わからんけど、
いま、TSUGI的には一番おもろい時期だと思ってて。
いいメンバーに恵まれながら、視界も広がってきたし、資金面としても成り立っている状態になっている。

TSUGIは、ザ・デザイン事務所というフォーマットにこだわる必要はないと思ってるんだけど。その中で、いま自分なりにフィットする役割を探そうとしている、その状況も割と気にいってるかな。

いいっすね。
そんな時に新山さんと話せてよかった。
新山 うん。
そしたら、また話そうや。
はい、今日はありがとうございました。
お気をつけて。
おやすみなさい。
新山 うん、ありがとうなー。

   

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移住者として鯖江市「ゆるい移住」に参加し、現在は鯖江市の職人工房開放イベント「RENEW」の企画・実行支援を手がけています。他にもいくつか、新しい取り組みを形にすべく活動しています。

■ブログ:教育・まちづくり・生き方を中心に、ブログを書いてます。
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投稿者:

森 一貴

山形県出身、東京大学教養学部卒。コンサルティング企業にて勤務後、鯖江市ゆるい移住に参加。現在、考える力を伝えるプロジェクト「CUE」代表。