今日は僕が超最高にハッピーでおもしろいと思っている事業、「ばあちゃんちステイ」のお誘い記事です。これはニッポンを変える力がある超サイコー事業なので、ぜひみんなと遊びたいです。

「ばあちゃんちステイ」は、簡単に言えば下宿のマッチングサイトです。一人暮らしのおばあちゃん、おじいちゃんの家に、空き家を探している移住希望の若者(若者じゃなくてもいいけど)が住める仕組みを作る。それがこの「ばあちゃんちステイ」の核です

ばあちゃんちステイって何?

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ばあちゃんちステイとは、一人暮らし、あるいは何人かで住んでいるんだけど、家が広すぎて持て余しているばあちゃん(じいちゃんも)の家をサイトに登録し、そこに申し込んできた若者(若者でなくてもいいんだけど)と、ばあちゃんとを繋げるプラットフォームを作ろうというプロジェクト。

ばあちゃん案件を集める方法として、もちろん足を使った各家への営業(これは大変そう)もしなくてはならないけれど、基本的には息子・娘夫婦へのネットを使ったアプローチを検討しています。

また、若者はどんな風にばあちゃんにリーチするか(住みたくなるか)という点も気になるかと思います。この点で言えば、ばあちゃんちステイは単なるマッチングサイトではなく、ある種ばあちゃんの知恵袋発信、「暮らしを発信するウェブメディア」的な要素を含むサイトになります。

具体的には、ばあちゃんちステイのサイトでは、ばあちゃんの日常、こんなばあちゃんなんだよっていうのを取材して、日本仕事百貨みたいな形で丁寧に記事にしてあげる、という活動を行います。

それによって、そのウェブ自体がなんらかの地方移住、地方の暮らしを発信するウェブメディアとして機能する。そのメディア自体が地方の暮らしの価値を発信することで、潜在的な移住希望者を着実に増やし、「あ、移住したいかも」という気持ちを作り込む。

そしてそのタイミングで、

「あ、このばあちゃんち…、住めるじゃん」

…!!!!!

これは、これはね、めーーーーーちゃめちゃおもしろいですよこれは。

空き家問題の現状って?

まず、そもそも現在の「空き家問題」に対する現状をお伝えしますね。

いま、全国どこの地方でも問題になっているのが「空き家があるのに住むことができない」つまり「貸してくれない(or持ち主がわからん)」問題です。

まず、若者の視点で見ると。空き室率は高いんだから(特に福井は空き室率全国No.1)、別に空きマンションに住めばいいじゃん、って思う方もいるかもしれない。実は、相続税対策なのかなんなのか(空き室率が全国一位なのに)、福井ではマンションがどんどん建っている

でも、地方に移住したい若者というのは、古民家での暮らしを体験してみたい、というかもう少し本質的なことをいうと、「とにかく安く住みたい」と考えています。だから、古民家に住みたい(というか、住んだほうが安い)と思っている。なのに、なぜか家がない。空き家があるのに、なぜかそこにリーチできない、持ち主に連絡できても、貸してくれないという状況が起きているんです。

では、貸さない側が悪いのかといったら、そんなこともないんです。「貸せない」側にも、色々と問題がある。というか、地方の古民家はもう、とにかく本当にたっくさんの問題を抱えています。

例えば、「仏壇があって人には貸せない」。あるいは、空き家になってしまってから510年経ってしまって「人が住める状態ではない」。ほかには、家の中があまりに汚くて「恥ずかしくて貸せない/片付けるのが面倒で貸せない」

更には、すごく深刻な問題(だと僕が思っている)なのが、地域の人との関係性による問題です。具体的にどういうことかというと、家を貸すと「あそこは、家を貸さなくちゃいけないほどお金がないんだ」と言われるので貸せない。あるいは、変な人に貸してしまった場合、その変な人を入れた貸主のあいつが悪い!!ということになる、つまり「借りる人に問題があった場合、その責任を被らなくてはいけないので面倒で貸せない」

見ていただければ分かる通り、この「古民家貸してくれない問題」が、どう考えても一筋縄ではいかないことは明らかです。ここまでが、空き家問題に関する現状。

ばあちゃんちステイのスゴさって何?

ということで、ここで「ばあちゃんちステイ」が出てくる

この「ばあちゃんちステイ」は、ほんとうにめちゃめちゃおもしろくて、移住を希望している若者、おばあちゃん(&おじいちゃん)、そして空き家問題を解決したいと考えている地方自治体、これら全ての人たちがスッゴイWIN-WIN-WINでメリットがある、そんな事業なんです。それぞれについて具体的に説明していきます。

移住希望者が気軽に移住できるプラットフォーム。

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まず、地方移住を希望している若者(改めて、若者じゃなくてもいいんですよ、ここは便宜上。)にとってのメリットから。

「ばあちゃんちステイ」はおばあちゃん(orおじいちゃん)と一緒に住む「下宿の形態」を推奨します。これによって若者は、これまでのように「全く知らない土地で、空き家を探し、その持ち主を探し、なんとか貸してくれるように頼み込む」というプロセスを踏まなくても、募集しているおばあちゃんに申し込みをすることによって、安価な家賃の家での暮らしが手に入る。

また、間借りになるため家賃が安くおさえられる上、おばあちゃんたちは、きっと彼らに対してごはんを提供してくれる、あるいは地域にこんな人がいるよ、という人脈を作ってくれる。これによって若者は地域に気楽に入り込めるようになります。また、おばあちゃん自身、あるいはおばあちゃん達の周りの人たちが、どんどん野菜を持ってきてくれるようになる。これによって、ほとんど食費が浮く(理想ベースですが)というメリットがあります。

まとめると、若者は「ばあちゃんちステイ」を活用することで、
・容易に家賃が安い家を見つけることができる。
・家賃が安いだけでなく、光熱費や食費なども安価におさえられる。
・初めての土地でも、地域に馴染みやすい。
というメリットがあります。

ばあちゃんがイキイキする地域へ。

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次におばあちゃん達のメリット。

一つ目は、生きがいです。まずは先ほども言ったように、若者が家にいることによって、生活に張り合いがでる。食もちょっと頑張って作ろうかな、肉でも買って帰るか、ということも出てくるわけです。

更に、ばあちゃんちステイがもたらすのは、単純にその家の中での「若者とばあちゃん」という関係性だけには留まらないと思っています。

地方に移住していくる若者は、まだまだベンチャー気質。新しい世界を切り開きたいと考えている人が多く、どんどんコミュニティを広げていく人が多い(ように思う)。これによって、おばあちゃんの周りに若い人たちのコミュニティができてくる。そして、更に彼らの食事も提供してあげることによって、おばあちゃんは自分のため、1人のために作るんじゃなくて、誰かの為に作ると言う充実感を得ることができますよね。

これは非常に大切なこと。皆さんも分かると思うけど、誰もいない家に1人で帰ってきて「ただいま」というのは、なかなか寂しいものなんです。加えておばあちゃんたちには、決まった仕事も特にないわけだから、コミニケーションもどんどん失われていってしまう。

そこでこのばあちゃんちステイによって、若者がおばあちゃんの家で2人で住める、というシステムを作ることで、おばあちゃんは話し相手が得られますし、ただいまと言える相手ができるわけです。

もう一つ、大きなメリットがあります。それは突然の病気、転倒などに対処できるということ

一人暮らしのおばあちゃん(orおじいちゃん)は、孤独死のリスクがどうしてもつきまとう。でも、こうやって2人で住むことで、何か病気で倒れてしまったとき、転んでしまって骨折してしまった時などに、助けを呼ぶ相手がいる。

これは非常に重要で、娘・息子夫婦が遠くに住んでいるとなかなか助けを呼びづらいという状況になっている。でも、この時に一緒に住んでいる若者がいるという安心感、これは本当に素晴らしい影響をもたらします。

これはもちろんおばあちゃんにとってだけではなくて、遠く離れて暮らしている娘・息子夫婦にとっても、安心できる一要素になるはず。ばあちゃんちステイによって、何かがあっても、彼が一緒に住んでいてくれるから大丈夫だね、という仕組みを構築できます。

加えて蛇足ですが、おばあちゃんを取り巻く「地域」に対するメリットも述べておきましょう。

今の地方は、若者の人手不足によって、催事やお祭りがどんどんできなくなっている。ここでばあちゃんちステイでやってくる若者は、新しい新築一戸建てやマンションに住むわけではなくて、地方に溶ける移住者になる(はずなんです)。

先ほども述べたように、移住者はなかなか地域の人と絡みづらい。しかし、ばあちゃんのおかげで、彼らはまず地域コミュニティに溶け込める。

それによって、コミュニティ自体が彼らの助けを得て、お祭りがまた新しく生まれ変わって、紡がれていく。ばあちゃんちステイは、地域がこれまで通りコミュニティをつないでいくための、非常に重要な仕組みとして機能するかもしれないのです。

自治体的には、空き家問題も解決されてハッピー!!

ばあちゃんちステイは、空き家問題の解決にも繋がります。自治体的にも超ハッピーな事業なんです。

え、そもそも空き家でないところに人が入るんだから、空き家問題は解決されないでしょう?どういう理屈?と思われるかもしれません。

準空き家、という本当の課題

一体、どんな論理かというと。誤解を恐れずに言えば、一人暮らしのおばあちゃんの家というのは、悲しいけれども10年や20年というときが経てば空き家になってしまう、「準空き家」なんです。ここから目を背けてはいけない。

それは、一人暮らしの高齢者の方が、亡くなってしまうということだけではありません。地方の空き家は、例えば家主が娘・息子夫婦の家に引っ越していったり、老人ホームに入ったり、病気で長期入院していたりと、様々な理由で家を空けなければならなくなるリスクが、本当にたくさんあるんです。

こうして、家主の人が家からいなくなってしまってはじめて、家は「空き家になる」。でも、ここから対策をしても、実はまったくもって遅い、遅すぎるんです

だって見ての通り、そこに既に家主はいないんですよ。天国にいらっしゃるかもしれないし、遠くの娘・息子夫婦の家に住んでいるかもしれないし、痴呆になってしまっているかもしれないし、老人ホームや病院にいるかもしれない。

一体、そんな状態でどうやって空き家を解決していくんでしょう?

空き家は年々増え続けています。だからといって、既に空き家になったところに対策をしても、なかなか有効な手立ては打てない。本当は、準空き家にこそ一番心血を注ぐべきであって、それが今後の空き家の上昇率を防でいく。ここにこそ、対策が有効に機能するのです。

ばあちゃんちステイが、準空き家を空き家にしない。

ばあちゃんちステイは、その「準空き家問題」にクリティカルに機能します。

ばあちゃんちステイで若者が入居したあと10年(そんなに住むかと言われると微妙な気がするけど、いろいろな人が住み続けて、というイメージ?)。その間、きっと信頼関係が生まれているはず。

そこで、おばあちゃんが入院してしまったり、老人ホームに行った際には、「家の事はあんたに任せるわよ」といえる状況を作っておける。これにより「誰もいないので朽ちていく」という状況を防ぐことができます。

更に、人は必ず亡くなってしまうものですから、残念ながらそのおばあちゃんが亡くなってしまった場合には、娘・息子夫婦が帰ってこない限り、そこは単純に考えれば空き家になってしまうわけです。

いや、娘・息子夫婦がいたら賃貸に出すだろう、と考えるのはあまりに単純で、実態としては、それは難しい。なぜかといえば、遠距離からわざわざ賃貸に出すのは面倒だから。一度顔を見に行くのにも金がかかるし、何か面倒事が起きたときに対処できないし、先も述べたように、地方では変な人が入ってきてしまった場合、その責任を負うのは貸主。そんなリスキーな「賃貸」に手をだす人はなかなかいないのです。

しかし、ここにばあちゃんちステイで入居した人が、既に住んでいたらどうでしょう。

きっと彼は(理想形ですが)、娘・夫婦息子夫婦とも連絡をとってきたことでしょう。少なくとも、彼の存在自体は知っているはず。こういう場合には「じゃあ長年住んでくれてたし、彼に渡す、あるいは貸すっていう選択肢もあるかな」という論理が実現しえます。

既に住んでいることから、貸す、あるいは譲渡することによるリスクもかなり低減されている。また、地域の人ともある程度やりとりができているとわかっているのであれば「変な人が入ってきた!」ということになるリスクも防げるわけです。

ばあちゃんちステイは、このような論理で、準空き家が空き家になるリスクを大幅に低減させることができます。従来のような、既に空き家になってしまった家を活用するのよりもはるかにうまい方法で空き家問題を解決していくことができるんです。

ばあちゃんちは、娘・息子夫婦からアプローチしたい。

ばあちゃんちステイは、「暮らしを発信するウェブメディア」兼マッチングサイトを利用してマッチングを進めていきたいと考えています。

私たちがばあちゃんちにリーチする方法は、先ほども述べたように、1つはその地域での人海戦術、一人暮らしの方の家を回って、下宿をやってみませんか?というやりかたがひとつ。もう一つ大事なのが、娘夫婦・息子夫婦に対してメリットを訴求していくということです。

娘夫婦・息子夫婦にとっては、一人暮らしのお母さん、一人暮らしのお父さんがいる、というのは非常に心配なんです。倒れてしまったらどうしよう、痴呆になってしまたらどうしよう。そんなとき、そこに住んでくれている存在がいる、というのはとっても気が楽になる。

そこで、娘夫婦・息子夫婦に対してオンラインでリーチすることで、おばあちゃんちを増やしていくことを考えています。移住希望者の若者自体は母数は非常に多いですから、またメディアの発信力もあいまって、ある程度のPV、リーチ数は見込めるのではないかと考えています。

ばあちゃんちステイは、(たぶん)行政の協力がいる。

ということで、ばあちゃんちステイのためにはサイト作成、娘夫婦・息子夫婦へのマーケティング、おばちゃんたちの家を回って、ばあちゃんちを集める作業、さらには生活をインタビューして記事にまとめるライティング作業などが必要になってきます。

ここで問題になるのが、ばあちゃんちステイはこれらの活動に対して、収入がなかなか伸びないだろうということ。

移住希望者は、やっぱりかなり安い家賃で住みたいと思っている。だからこそばあちゃんちステイには社会的意義があるのですが、じゃあその手数料として仮に100%もらったとしても、ひとつの案件で最大でも2万、3万程度しか得られないはず。逆に、もっととろうと思ったら、たぶん集客がかなり難しくなるでしょう。不動産的なビジネスモデルで収益を得ようという思考は、そもそも移住希望者の希望に合っていない。そこが最大の懸念点です。

そのため、ばあちゃんちステイは民間ではできないのではないか、というのが僕の現段階での結論です。行政、あるいはNPO法人等が事業を担っていく必要がある。

あるいは例えばですが、ばあちゃんちへの営業作業を、何らかの形でアウトソースするという手段はとることはできそうです。例えば、NHKの受診票を集めている人たちとか、薬の訪問販売をやっている人だったりとか、そういう人たちに繋いでもらうのはアリだよね。

ばあちゃんちステイは、完璧なの?

もちろん、この事業を細かく見ていけば、リスクはたくさんあります

そもそも、貸したいと思うおじいちゃん・おばあちゃんなんているのか?また、おじいちゃん・おばあちゃんの家にじかに営業をかけるなんて、やっぱり費用対効果から鑑みれば、たぶんほぼ不可能です。

また、本記事では実際に住もうという若者が、いいやつであり、地域で活躍することを前提に語っています。でも実際には、地域からの「ボランティアしろ圧力」によって、もう嫌だと東京に逃げ帰る人や、マンション暮らしに切り替える人だって、いくらでもケース自体は出てきうるでしょう。また、その若者が住んでみたら実はすごい問題児で、地域を逆に疲弊させる存在になる可能性だってありうる。

でも、やってみる価値はある。ていうか、失敗したからといって、何かすごい損をするような話ではないのだから、やってみればいい。少なくとも、これをやることによって生まれる幸福の総量自体は、やらない状態よりも、はるかに多いはずです。

っていうか、素朴に想像してみて…、絶対おもしろいじゃないですか!!一人暮らしの若者が、田舎にいって、ばーちゃんと二人暮らししながら、なんか知らんけど楽しそうに生きていく

もう、前例はある。

ところで実は、何よりも心強いことがあります。この福井∋鯖江∋河和田には、既にばあちゃんちステイの事例がある、ということ。

鯖江市・河和田で活動するTSUGIのメンバー・楳原さんは、河和田の丸山さんという一人暮らしのおばあちゃんの家で、すでにばあちゃんちステイしているんです。

その実態といったらおもしろすぎて、U-29にも取り上げられるほど。そして実際、丸山さんが倒れてしまったときにすぐに助けてあげることができた、という事実もあるのです。

よかったら見てみて下さい。これはですね、アツいよ。

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楳原秀典~NPO職員
NPOの職員楳原秀典さん。働く日々の中で、田舎で生きていく楽しさを学んでいる。 しかし大切な彼女は今も都会暮らしで遠距離恋愛中。このまま田舎暮らしを続けるのか…

http://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005170420_00000&p=box

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すでに前例があって、やれないわけがない。やれます。あとは、誰か(というか、どこかの行政)が「それ、やりたい!!!」といってくれるだけでいい。

ということで、誰か、一緒にやりませんか?これは、日本中にwinをもたらす、本当に素敵な事業だと思っている。

一緒にやりましょうよ。これは、めちゃめちゃおもしろいよ。