各地でアクティブラーニングを取り入れる教師が増え、また各地で探究型の授業に取り組む塾が少しずつ芽を出し始め、メディアに取り上げられるケースが出てきました。

そしてついに、そうしたムーブメントのなかで、ついにとんでもない学校が生まれることになりそうです。

名は、「軽井沢風越学園」。2020年の開校を目指して、設立準備を始めているそう。

設立メッセージを抜粋します。

私たちは、一斉授業・画一的なカリキュラム・固定的な学級編成等に代表されるような従来型の学校教育に限界を感じている一方で、子どもがもつ学ぶ力と学校教育の可能性を信じています。

軽井沢の豊かな自然環境を活かし、3歳から15歳が共にゆるやかに関係する環境を整え、学校教育の新しい在り方を提示し、公教育のモデルとなるような学校の設置を目指します。

まだまだウェブサイトの様子をみても、イマイチ様子は伝わってこない。でも、見るひとが見ると、これが「ハンパない」ことはすぐわかる。なぜわかるかって、発起人の顔ぶれがヤバいのだ。

というわけで、さくっと紹介。

本城慎之介(株式会社音別代表取締役)

本城さんは、楽天副社長ののち横浜市立東山田中学校校長や学校法人東京女学館 理事を務め、現在は株式会社音別代表。また、軽井沢町で野外保育「森のようちえんぴっぴ」の運営と保育に携わっています。

本城さんのことは、ちなみに僕はあまりよくしらない…。すいません。音別では「仕事の学校」を通じ、中高生や社会人に、対し、“一人ひとりの「大切にしたいこと」を、対話を通じて確かめる時間と場”を提供しています。(引用:http://www.odyssey-com.co.jp/essay/essay67.html

本城さんの雑記ブログはこちら

岩瀬直樹(東京学芸大学大学院教育学研究科 准教授)

最近の教育業界では、名を知らぬ人のいない岩瀬直樹さん、通称「イワセン」。

教師として子どもたちが真に主体となる授業を実践し、その経験を多数の書に著しています。教育現場への「ファシリテーション」や「プロジェクトアドベンチャー」の導入も、かなり早い段階からなさっていたのではないか。

現在は現場をはなれ、東京学芸大の教育大学院にて、教員になる人々の育成に注力。彼の書籍は、本当に多くの教師を、そして生徒を導いたはずです。

「こども主体」のクラスづくりの方法が書いてある。これは本当に読んでおいて損はない。いかに自分たちが、「こども主体」という言葉を安易に使ってしまっているのか、はっとさせられる。まさに極意!ってかんじ。

教育とファシリテーションについて、実践方法を示した一連の書籍もオススメです。

苫野一徳(熊本大学教育学部 准教授)

この方も言わずもがな、教育界の有名人。

公教育の本質は「自由の相互承認」の実質化にある

この言葉好き。

簡単に説明すると、僕たちは自由に、やりたいことをやるべきです。これは前提。でも一方で、自由にやりたいからといって、人にわがままを押し付けたり、人の自由を制限してしまうのはおかしいですよね。だから、「他人の自由も尊重し、認めてあげなくちゃいけないよね!」というのが「自由の相互承認」

お互いの自由を尊重しあいながら、自由に振る舞えるのがサイコーだよね!!と言っているわけです。「自由の相互承認」。ステキですよね。

苫野さんの著も、かなり良い。

強い題名。「よい教育とは?」について、まじめに向き合った著作。

あるいは、日本におけるイエナプラン教育の第一人者・リヒテルズ直子さんとのこの共著もおもしろい。

また、以下は中高生向けに、哲学者・苫野一徳が全力で「なぜ勉強するのか?」に向き合って書き上げた著。きちんと「そもそも論」から議論してくれていて、なんというか、ワクワクしちゃう。

更に、幼児教育もするとかいう。

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そんないまの日本の教育界を牽引する方々が、学校を創るという。どう考えてもアツいのです。

それにくわえて、更にアツいことがある。それは、なんと学校は「3歳」から始まるということ。これは、衝撃です。何が衝撃かを、以下に述べます。

中室さんの「学力の経済学」という本がある。

日本の教育は、みんなが学校に通っているがため、おエライさんたちが「俺らが受けてきた教育はこうだった」とかいうテキトーな主観の議論で話が進んでしまっている。その現状に、データという大砲をぶちかました、偉大な本がこれだ。教育者も、親も、すごく必読。

で、この著作の中で中室さんが言及しているのは「幼児教育の重要性」。なんとデータによれば、小学校入学前の教育投資が、最も投資効果が大きいのだそうだ(簡単にいえば、小学校入学前に良い教育を受けた子が、一番お金持ちになる、ということ)。

しかしいまの日本の現状では、保育士の給料はご覧の通り低い水準にとどまり、幼児教育は保育士の熱意に頼りきり。幼児教育の発展など、のぞむべくもない。でも、中室さんのデータを信じるならば、保育士こそ最も専門性が必要で、そこに国として多大なる投資をするのが「あたりまえ」にならなくちゃいけないはずなのだ。

そこが今までは、シュタイナーとか取り入れてるところ以外は、なかなか手が届かなかった。どうやって始めたらいいか、わからなかった。そこにも風越学園は、「公教育として」この幼児教育の領域を設けている。

この意味は大きい。彼らは、幼児教育にもおもいっきりメスを入れようとしているのだ。

自由に、しあわせに。

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風越学園の「目指す学校像」を以下に抜粋する。

私たちは、すべての子どもの<自由>に生きるための力を育むと同時に、<自由の相互承認>の感度を育む場所が学校だと考えています。より多くの人が「自由だ、幸せだ」という実感をもって生きられる社会が私たちの理想です。軽井沢風越学園では、このような社会の担い手を増やします。
(太字は筆者)

そうなんだよね。

この1文(赤文字にしたところ)がサイコーにしあわせ。今年の読み返したい文・暫定第一位。これが、本当に大事。

2020年に入試が変わる。教育業界は「知識」ではなくて「課題解決能力」とかが大事、という流れになってきている。そしてその変革は「グローバルになり外国人が入ってくるから」、「これからAIが出てきて職がなくなるから」、そんな彼らとの「競争のなかで子どもたちが生き残るために」必要な変革、だと思われています。

でも、本当は違うと思うのです。外国人が入ってきたり、グローバルがひろがったり、AIが出てきたりしても関係ない。AIが本当に末端まで行き渡ったときのことを考えてほしい。AIが全部やってくれるようになったなら、僕たちは仕事なんてしなくても生きていけるようになるはずだ。もはや、競争なんていうレベルじゃない。

その、AIが全てやってくれるようになった世界を想像してみてほしい。それは、実は怖い世界なのだ。

「いいよ、これから何もしなくていいよ」。そんなに怖い世界はない。毎日毎日、何もしなくていいのだ。誰にも求められないのだ。解決すべき(解決させてもらえる)課題すら、そこにはないのだ。僕たちはついに向き合わざるをえない。僕はなんのために生きている?

そのときのために、僕たちは準備をしなくちゃいけない。そのために、教育は変わっていかなくちゃいけないんだ、と、僕は思っている。

そのとき大事なのは、自分自身で、「自由にしあわせに」なるちから。

これが僕の考えだ。去年も一昨年もそんな記事を書いた。

僕が考える【サイコー】について。ただ、にやにやしていたいだけなんだよ。

そして、それが僕にとっての教育の理想だ、と思って、ハルキャンパスを作りたいと思った。

新しく楽しい社会を創る子どもを育てる。「ハルキャンパス」を始めます

僕は記事のなかで、「新しく楽しい社会を創る子どもを育てる」と書いた。自分で勝手に「楽しい」を創っていける人になってほしいと。

さて、風越学園は、これですよ。

より多くの人が「自由だ、幸せだ」という実感をもって生きられる社会が私たちの理想

そんなの、公教育でやられたらたまったもんじゃない。そんなの、しあわせすぎる。

そう、これは教育の理想なのだ。国が投資する「公教育」という場で、「自由としあわせ」を学べること。これは教育の理想だよ。

採用募集してる。

そしてその風越学園が、採用募集してるわけです。日本の教育史を変える事変を僕たちは目の当たりにしていて、かつ、一緒にやらない?と言われている。

採用

軽井沢風越学園設立準備財団では、創立メンバーとなる教職員を募集しています。私たちが掲げる理念に共感する挑戦心あふれる方、一緒に新しい学校を創りませんか。

もう一度言う。これは、教育の理想だよ。

日本の教育が変わる。楽しみだなあ!

 

 

岩瀬直樹さんの「クラスづくりの極意」。

苫野一徳さんの「教育の力」。

中室牧子さんの「学力の経済学」。