「お気に入りのアルバム10枚について、そのカバーをfacebookにあげていく&次の人を指名する」という音楽ねずみ講に巻き込まれました。せっかくなのでご紹介。

Day1:東京スカパラダイスオーケストラ「WILD PEACE」。

“東京スカパラダイスオーケストラ”。スカパンクの毛色が強い日本のスカシーンにおいて、唯一無二ともいえる「トーキョースカ」を30年近くにわたり鳴らし続け、今や世界のスカシーンを牽引するスカバンドです。

日本のバンドとしては極めて長いそのキャリアのために、メンバー変更にともなう多様な変化を受け容れながら走り続けてきた同バンド。

WILD PEACEは、以下の「コラボ三部作」を含み、スカパラの新しい方向性を決定づけた岐路ともいえる一枚です。

・「星降る夜に」 (guest:甲本ヒロト)
・「追憶のライラック」 (guest:ハナレグミ・永積タカシ)
・「サファイアの星」 (guest:CHARA)

加えて、本アルバムには「太陽にお願い」と「White Light」という、スカパラのライブにおいても定番中の定番(もはや、White Lightに関しては代名詞とすらいえます)でもあるアップテンポナンバーが二曲も収録されています。スカパラのなかでも特にポップで聞きやすいアルバムであることは議論を待たないでしょう。

WILD PEACEより「星降る夜に」(guest vocal : 甲本ヒロト)

White Lightのライブ版。個人的にはDiscover Japan Tour版のアクトが好きです。

本能としてのスカパラダイスオーケストラ

スカパラは間違いなく、森の今の音楽のルーツ。高校の吹奏楽部の先輩に誘われて、当時全く存在を知らなかったスカパラのライブに訪れた僕は、音楽というものの概念を180度ひっくり返されるような経験をしました。

ああ、音楽というものは、こんなにも本能的で身体的で官能的で共感的で包括的なものなのか。

そして、ああ、こんなにもかっこいいものなのか。

当時の僕にとって音楽とはBUMP OF CHIKENでありRADWIMPSでありELLEGARDENであって、吹奏楽部で鳴っているトランペットというものは薄い膜の向こうにあったのです。見えていたけど理解していなかったもの。それが明確な輪郭を携えて強烈にたちあらわれる感覚を覚えました。これ以降、トランペットやサックスやトロンボーンに対するリスペクト(というか俺が吹きたい、という嫉妬)を抱けるようになったのはスカパラのおかげです。

かつ、当時の僕の理解によれば、音楽というものは前提知識の上に、ある種「閉鎖的に楽しめるコミュニティ」であることが当たり前だったのです。邦楽ロックはこうした前提にたち、「知らなければ楽しめないライブ/音楽」になってしまいがちだ、と僕は思っています(それを単純に否定する気はありません。それは同時に、コミュニティ内の結束を深める役割を果たしていることは間違いないからです)。

しかしスカパラのライブは違った。

当時、僕はスカパラの曲を一曲も知らなかった。知らなかったけれど、ああ、音楽はこういうふうに楽しめるものなんだ。誰も知らなくても、本能的に体が動く。勝手に隣の人と笑顔が、あるいは身体的感覚が繋がる。そう、前提知識なんていらねえんだ、これが音楽なんだよ!!、と僕に教えてくれたのがスカパラでした。

 

そして先輩に借りたのがアルバムWILD PEACEであり、僕が初めて買ったのがWILD PEACEのバンドスコアであり、そして僕が初めて主体的にドラムを練習したのがWILD PEACEの「Come On!」だったわけです。そうして僕はスカパラを通じてBob MarleyやThe Specialsに出会い、大学でも「スカパラが演奏できるサークル」を選び、Earth, Wind & Fire、Incognito、Candy Dulfer、tower of power、boston hornsに出会い…、僕にとってはどれもこれも、スカパラがつないでくれた出会いだ、といったら言いすぎでしょうか?

こちらは社会人一年目の森がドラムを叩いている「カナリヤ鳴く空」。最高にイカしてる。

スカってやつは、もう心が踊っちゃうんだよ。

ところで、この東京スカパラダイスオーケストラは「スカ」というジャンルを形成しており、その特徴は2拍目・4拍目に入るギターの「スチャッ」という音と、トランペットなどのブラスバンド編成であること。ギターの「スチャッ」がジャンル名の由来になっているんですね。

ジャマイカが発祥で、その特徴は「白黒のスーツ姿」で「ルードボーイ」で「モンキーダンス」。だからスカバンドは、大抵ロゴは白黒の2トーン(よく市松模様が用いられます)、白黒スーツに身を包み(だからスカパラもスーツ姿なんです)、大体「rude」か「monkey」が含まれる曲名の曲があります。この白黒ってのは、白人と黒人の共存、という意味も込められているそうです。素敵。

でもやっぱり、スカはモンキーダンスだよね。現在はほとんどのケースで、以下の動画でいうと1:00前後で踊られるパターンのモンキーダンスが踊られています。

 

せっかくなので、僕の大好きなスカを3曲だけ紹介します。

スカを一躍有名にした「Specials」よりMonkey Man。最高です。

スカは1970年代、ジャマイカからイギリスへ飛び火。この頃に、今の日本のスカシーンでも聞かれる、スカとパンクとが融合した「2tone ska」と呼ばれるジャンルが生まれました。

当時のイギリスはskaの黄金期とも言えるような時代で、the specialsはもちろんのこと、madnessやselecters、bad mannersなど数々のスカバンドが群雄割拠をなしていました。

その2tone skaのスタイルを継承したpost 2 tone skaの時代に生まれたのがthe toasters。「mona」はほとんど有名ではありませんが、僕は大好きです。

こののち、アメリカにわたって3rd wave skaと呼ばれた時代は、激しい楽曲が制作され、またsublimeやFishbone、Less than Jakeなど、いまに名を残すスカバンドが数多く登場した時代です。

 

80年代後半、日本でもスカバンドがうまれました。これは2つの流れがあり、ひとつはオーセンティックスカを継承する東京スカパラダイスオーケストラやレピッシュなどの流れ。ska ska clubやdeterminationsなどに受け継がれていきます。

もうひとつが、ハイスタが持ち込んだ「スカパンク」の流れです。KEMURIが最も有名ですが、Scafull KingやPotshotなど、当時の日本では、スカが一世を風靡したことも。

日本で特筆すべきは「姫スカ」文化。スカパンクの流れを継承しつつ、オレスカバンド、シャカラビッツ、ムラマサ、Yum!Yum!Orange、レトロ本舗など、大阪を拠点に、2000年代に多くの女性ボーカルを擁するスカバンドがうまれました。みなさんもYum!Yum!Orangeが歌う「葛飾ラプソディー」、きっと聞いたことがあるんじゃないでしょうか?

 

さあ、情熱のスカへ。

こうして振り返れば、スカも長い歴史のなかで、形を変えながらいまの僕たちに届いています。いまのミニマリズムのなかでは、スカという音楽はマジョリティの支持を獲得しているとは言えないんだろうと思います。それでも、その連綿と受け継がれてきた熱量は、確かにここにある。

僕に未来への新しいきっかけをくれたスカパラ。ライブのとき、必ず放たれる言葉があります。その言葉を結びにかえて皆さんに贈ります。きっと、音楽も人生も一緒だからね。

戦うように、楽しんでくれよ!
−谷中敦 by 東京スカパラダイスオーケストラ

 

 

 

authentic skaの系譜を独断と偏見で切り取ったプレイリストはこちら。reel big fishやオレスカバンドは本当はauthenticからは外れるのかも。

 

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